浜田市にパキスタンから来られた方が住んでいらっしゃると聞き、取材に伺ってきました。乾ハメッドさんは、当時JICA青年海外協力隊員としてパキスタンのイスラマバードに派遣されていた妻の恵里子さんと出会い、その後の結婚をきっかけに来日されたとのこと。異国情緒あふれるお部屋で、島根での暮らしなどについてお話を伺いました。


ハメッドさん

ハメッドさん

SIC: 島根に来日された経緯は?

ハメッドさん:2000年にイスラマバードで妻と出会い、その後アメリカ同時多発テロが起き、3日後には妻の緊急帰国が決まりました。その時は先が見えず、パキスタンがどうなるかも分からず、また妻とも離れることになり、不安でいっぱいでした。3カ月後にパキスタンに戻った妻と再会し、しばらくしてから結婚しました。その後はロンドンに住んだり、2005年にパキスタンで大地震があった際には二人でまたパキスタンに戻ったりもしましたが、2007年からは日本に住んでいます。

SIC:日本での暮らしはどうですか?

ハメッドさん:最初は日本語がまったく分からず、来日した当時はずっと日本のテレビを見ていました。そこできっと日本語の発音を覚えたのだと思います。妻とは英語やウルドゥー語でコミュニケーションが取れたので、それまでは日本語を学ぶ必要性を感じていなかったのですが、娘が保育園に通うようになってからは保育園の準備もわからないし、娘もどんどん日本語を話すようになってきたので…私も日本語を勉強し始めました。浜田の日本語教室にも通っていましたよ。

ピーターコンの人形

ピーターコンの人形

SIC:(お部屋の真ん中に、面白い人形がありました)これはどこかのお土産ですか?

ハメッドさん:それはタイのピーターコン祭りで買ったものです。店の看板娘になっていたので店主は売りたくなかったようですが、妻がとても気に入り、頼み込んで譲ってもらいました。
実は2017年から妻がタイの日本人学校で仕事をすることになり、家族全員で3年間タイに住んでいました。その時私は主夫になり、子どものことや家事などをすべて引き受けました。子どもが小学校と中学校に入学したばかりだったのですが、お弁当を作ったり勉強を見たり、子どもと何でも一緒にできる時間を持てたのはとても良かった。子どもはとても面白いですね。家族を支えることができて、とても嬉しかったです。
タイの日本人学校はとても大きく、1学年に子どもが400人以上いる学年もありました。PTAではないけれど、保護者が学校に関わる様々な活動があり、他のお母さんたちに混じって週2回ぐらい活動に参加していましたよ。また、タイで日本語を学ぶ学生を日本人家庭にホームステイさせるNGO活動にも参加していました。日本でもこういう活動ができればいいのですが…。

タイの学生と一緒に

タイの学生と一緒に

SIC:浜田でも何か参加されている地域活動などありますか?地域との関わりはいかがですか?

ハメッドさん:今は草刈りとか、自治会の飲み会に参加するぐらいでしょうか…子どもが保育園に行くようになってからは、子どもが「○○の親は外国人だ」などと言われないように、自分から他の子どもたちとも積極的に関わる機会を作り、コミュニケーションを取るようにしていました。送迎に行ったときにも、他の子どもたちとよく遊びました。肩車したり、腕にぶら下がらせてあげたりするとみんな喜んで…子どもたちがなかなか戻ってこないので、先生は困っていたかもしれません(笑)。
以前は福祉施設で10年ほど調理の仕事をしていたこともあり、日本食も得意ですが、地域の方に頼まれて公民館でパキスタンカレーを教えたこともあります。

恵里子さん:最初の頃は、「(地域に)外国人がいる」と遠巻きに言われていました。パキスタンと言えば日本では少し怖いイメージもあったようですが、私たちが住んでいる地域には発電所もあるせいか外部からの人の出入りが多く、新しい文化を受け入れる風土があるような気がします。

バンコクの有名な観光地・ワットパクナム

バンコクの有名な観光地・ワットパクナム

象に乗って

象に乗って

 

 

 

 

 

 

 

SIC:パキスタンのご家族はどうされていますか?

ハメッドさん:両親のことが心配で、去年3カ月ほど一人でパキスタンに帰国していました。私は7人兄弟なのですが、とても賑やかですよ。最後に子どもをパキスタンに連れて行ったのは、長女が2歳の時でした。下の子は連れて行ったことがなく、両親にもまだ会わせていないことがやっぱり気になっています。お互いに言葉が分からないのでコミュニケーションを取ることもなかなか難しいですが、写真などを送って様子を伝えるようにしています。

SIC:休みの日はどのように過ごしますか?

ハメッドさん:家族で外に食べに出たりすることも多いですが、今は新型コロナウイルスの影響であまり出かけることができていません。温泉が大好きで、浜田市内の温泉には大体すべて行ったと思います。初めて温泉に入った時は、周りの日本人が皆こちらを見ていて湯船から出るタイミングがわからず、1時間ぐらい出られませんでした(笑)。今では温泉が大好きです。
また、三瓶(国立三瓶青少年交流の家)もとてもおすすめですよ!子どもと一緒に泊りがけでよく行くのですが、自然の中で遊んだり創作したり、ゆっくりできます。ビュッフェがあるので、ご飯の心配もしなくていいですよ(笑)。

三瓶山でサイクリング

三瓶山でサイクリング


■最後に
島根県内でパキスタン出身の方にお会いしたのは、今回が2度目でした。パキスタンでは、自分の好みの布を買ってオーダーメイドで服を作るのが一般的だそうですが、ハメッドさんはデザイナーが作った既製服を売るブティックでお仕事をされていたそうです。ドレスなどの写真を見せていただきましたが、カラフルで美しい刺繍、エキゾチックでイスラム文化漂うデザインに一気に魅了されました。
「新しいことをやりたい、同じところにいたくない」と、常に前向きで向上心の高いハメッドさん。島根でも何かご一緒できることがあれば嬉しいです。


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