~外国につながる人たち~(36)孫 雪さん
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現在2児の母として、子育てに仕事にと忙しい日々を過ごしておられる中国出身の孫さんは、元々は浜田市内の水産加工会社で働いていた技能実習生でした。実習後には故郷の中国に帰国したものの、縁あって再び日本に戻り、浜田で結婚、就職、出産、子育てをしながら13年が経ったそうです。SICのボランティアにも関心を持ってくださって、様々なボランティアや親子向けイベント等にも積極的に参加してくださっている孫さんに、島根での暮らしなどについて話を聞いてきました。
SIC: 技能実習をしていた頃は、どのように暮らしていましたか?
孫さん: 2005年に技能実習生として初めて中国から来日して、市内の水産加工会社で3年間働いていました。その時は中国人が多くて、30人ぐらいいたと思います。みんなで一緒に寮で生活していて、とても仲が良かったです。
春節(旧暦の正月で)にはみんなで集まって食事をしました。昼から食べ始めて、夜まで食べていました(笑)。とても楽しかった!中国では、春節に親戚が集まって麻雀をしたりしますが、私たちは帰国できなかったので、みんなで集まって一緒にお祝いをしました。
当時は長浜に住んでいました。長浜で毎年行われている八朔花まつりの会場のすぐ近くに住んでいたので、お祭りには実習生のみんなと毎年行っていました。花は持ち帰ることもできて「火除け」になるそうなのですが、当時は意味も分からず、ただ街に飾られた色とりどりの花々に魅力されていました。おばあちゃんたちに「18:00にならないと(花を)取ったらだめよ」と教えてもらったのですが、開始の合図が出たとたんに一瞬でなくなって(笑)、とてもびっくりしたのをよく憶えています。
SIC:日本語がとても流暢ですが、どのようにして学びましたか?
孫さん: 技能実習中に日本語能力検定の2級を取りました。実習生の仲間たちがたくさん応援してくれたんですよ。社長が私たちに「日本語能力検定を受験するなら受験料も出すし、広島(受験会場)まで連れて行ってあげるよ」と言ってくれたのですが、みんな広島に行きたかったこともあり(笑)、友達が私に「応援するからぜひ2級を取って!」と言って、私が受験することになりました。周りの実習生の中では一番日本語を分かっていたので、一番可能性がありそうに思われたんだと思います。
その頃は作業着で仕事をしていたのですが、寮に帰るとすぐに「はい、服を脱いで!洗ってあげる!」と言われて(笑)、洗濯をしてくれる人、お弁当箱を洗ってくれる人、夜中に勉強をしていると夜食を作ってきてくれる人など、仲間たちが毎日サポートしてくれました。私が2級を取るために、みんなが応援してくれたんです。とっても仲が良くて、みんなが自分のことのように、毎日疲れているのに喜んでサポートしてくれました。そのおかげもあって2級に無事合格し、みんなにはお礼に焼肉をごちそうしたり、お菓子を焼いてプレゼントしたりしました!その後、中国に帰国してから1級も取りました。
SIC:その後、結婚をきっかけに日本に戻られたのですね?
孫さん: はい。技能実習を終えてから中国に帰国したのですが、一緒に仕事をしていた日本人(現在の夫)とは帰国後も電話やメールで連絡を取っていて…優しい人だとは思っていたのですが、国際結婚をする気はなかったので、しばらくは結婚を申し込まれてもお断りしていました。でも夫が中国に何度も来てくれたこと、その優しさと熱意に打たれて結婚を決めました。最初は中国の両親も離れることへの不安があり、私を心配して反対していましたが、夫の人柄を見て結婚を認めてくれました。
当時は日本語能力検定の1級を持っていれば故郷の大連で良い仕事に就くことができたので、日本に戻ることへの迷いもあって…周りの友達も「日本に戻っていいの?」と言っていましたが、みんな「小林さん(夫)はいい人!」と、夫に関してはまったく心配をしていませんでした。
日本に戻ってからは、積極的に交流の場に参加したりして色々な人と知り合い、輪を広げるようにしました。元々人と会ったり話をしたりするのが好きでしたが、実習生の時は実習生以外と知り合う機会が少なかったです。周りは誰も知らない人ばかりだったので、どんどん外に出て行くようにして交流を深めました。夫の両親がとてもよくサポートしてくれて、免許も取りました。
SIC:日本人家族との生活、また日本での子育てはいかがですか?
孫さん: 夫の両親と一緒に暮らし、最初は食事の時間などお互いに気を遣って生活していたところもありますが、仕事をしているため生活のリズムが違うこともあり「自分たちのペースでいいよ」と言ってくれたので…今ではお互い気も遣わずストレスもありません。
中国でもだんだん両親と同居する人が減ってきていますし、「(義両親との)同居は大変じゃない?」と言われることもありますが、子どもの面倒を見てくれたりたくさん助けてもらったりしていて、逆にありがたい存在です。
子育てについては、そもそも中国の子育てもそんなに知らなかったので…(笑)。困ったときは浜田市子育て支援センター「すくすく」に相談したり、義母に聞いたりしました。義母が「時代が違うからわからない」という時は、ママ友に聞いたりして乗り切りました。義母はいつも「あなたたちが親だから」と、私たちの気持ちや考えを尊重してくれています。
SIC:もうすぐ春節(旧暦のお正月※2023年1月)ですね。家でもお祝いをしますか?
孫さん: そうですね、餃子でも作ろうかなと思っています。この前物産展で中国のお菓子などを買ってきたので、少し雰囲気を出そうかな(笑)。中国では春節に餃子を食べていたのですが、中にお金を入れるんですよ。お金入りの餃子に当たると、その1年はいいことがあると言われています。
中国にいる弟が今年は年男なので、赤い服をプレゼントしました。中国では年男・年女は正月に赤い服を着る風習があるのですが、弟の奥さんは赤いパジャマを買ったと言っていたので、私からはトレーナーを贈りました。
次女が生まれて約1年経ったところですが、長女の小学校入学前に中国に帰国してからは帰ることができていません。次女には赤ちゃんの時から少しずつ中国語でも話しかけるようにしているのですが、たまに中国語で話しかけて理解しているのが分かると、ちょっと嬉しいです。中国の両親とは週に1回ぐらい「WeChat」というアプリを使って連絡を取っています。
SIC:今後、やってみたいことなどありますか。
孫さん: そうですね…スキルアップしたいです。日商簿記2級を取って、今は会計の仕事をしています。本当は産休中にも資格を取ろうと思っていたんですが、テキストが間に合わなくて断念しました。このままの自分でいいのか、と考えることがよくあります。歳を重ねていくほど仕事が探しにくくなりますし、外国人では、差別ではないのですが日本語の面で競争するのが難しいと感じることもあります。もっと勉強して、スキルアップしたいですね。医療通訳の資格とか、今後役に立つものを取れたらと思っています。もっと強くなりたい。もし資格が取れなくても自分のためになると思うので…頑張ります!
■最後に
「私は人に恵まれているんです。中国でも日本でも、いい人が集まってきてくれて幸せです。」とおっしゃっていた孫さん。いつも前向きで、困ったことを聞いても「まあ、あるものでうまくやれるから…」とお話されていて、とても優しく穏やかな人柄ですが、強くしなやかに生きておられるような印象を受けました。これからも、SICの事業にもたくさんご協力くださいね!
(公財)しまね国際センターは~外国につながる人たち~を応援しています