「吉賀町の大ファンなんです」と、にっこり微笑み吉賀町への愛を語ってくださったのは、吉賀町のALT(外国語指導助手)として14年間お仕事をされているアメリカ出身のケビンさん。外国人住民の割合が県内で最も高い吉賀町で長く暮らしておられるケビンさんに、島根での暮らしや吉賀町の魅力、また故郷についてなど色々とお話を伺ってきました。

ケビンさんと愛犬

ケビンさんと愛犬

SIC:吉賀町に住み始めたきっかけは?

ケビンさん:ALTとして、吉賀町に赴任したのがきっかけです。今では吉賀町のWEBサイトも充実していますが、当時は情報があまりなくて…吉賀町のことは通っていた大学の日本人教授に聞いても「知らない」と言われ、来日前はどんなところか、想像もつきませんでした。初めて吉賀町に来たのは7月の終わりだったのですが、山の景色や高津川がとても綺麗で感動したのを憶えています。14年前にはコンビニもなかったので、ニューヨーク州出身の私は正直なところ不安も大きかったのですが、徐々に慣れていきました。

仕事を始めてすぐに赴任先の小学校で運動会がありPTAの打ち上げにも参加したのですが、偶然隣に座ったPTA会長さんとはその後とても親しくなり、今も家族ぐるみで仲良くしています。正月も日本で過ごしていた私に、「一緒に過ごそう」と家に招いてくれたりして、友人というか、日本の家族のような存在になりました。今でも何かあれば相談するし、とても大事な出会いだったと感じています。

運動会の打ち上げにて、PTA会長と。

運動会の打ち上げにて、PTA会長と。

SIC:吉賀町での暮らしはいかがですか?

ケビンさん: 子どもたちがとてもピュアで、先生たちも素晴らしい!ALTの仕事がとても好きで、子どもたちと一緒に過ごすのはとても楽しいです。子どもたちを見ているとやる気も出るし、頑張りたい!と思わせてくれます。教育委員会や役場の皆さんもとても素晴らしいですよ。働きやすいし、このメンバーと一緒にやりたい!と思わせてくれるんです。先生たちには異動があるため吉賀を離れる同僚もいますが、またしばらくすると戻ってくるので、私が「おかえり!」と迎えています。毎回仲間が戻って来てくれるのはとても嬉しいです。

家族のような友達もたくさんいますし、5年前には結婚もしました。妻の家族もとても優しくしてくれます。妻の実家にも毎日遊びに行っていて、犬の散歩をしたり、家族とも仲が良いですよ。
私はカトリックなのですが、妻の実家はお寺で…初めは心配しましたがみんなとてもウェルカムで、お寺の式やイベントにも参加させてもらったり普段見られないものを見せてもらったりして、とても面白いです。お手伝いにも行くことがあるのですが、後で「何のイベントだったの?」と聞くこともあります。(笑)
驚くほど皆と仲良くできて、気も遣わないし、とても楽しいです。親しくしている友人には「ケビンは日本語が上手だけど、「いいえ」を知らないね」とよく言われます。色んな誘いを受けると「YES」しか言わないので。(笑)いい経験になるから、何でもやってみたいと思っています。

結婚式

結婚式

SIC:ケビンさんの「吉賀町のおすすめ」は?

ケビンさん:まずは日本一の清流高津川ですね。川のそばでバーベキューもできますよ。今はコロナの影響で中止が続いていますが、「よしか・夢・花・マラソン」というマラソンイベントもあって県外からもたくさんの人がやってきます。いつもスタッフとしてお手伝いしていますが、このマラソンでは最後に花のブーケがもらえるんですよ。有機野菜にも力を入れていますが、こっちの野菜は本当にすごくおいしい!元々野菜は好きだったけど、とてもおいしいんです!棚田米もおいしいし、冬のライトアップもとても綺麗です。あとは、蛍も綺麗!初めて見たときはびっくりして、映画みたいで感動しました。温泉施設から蛍スポットまで送迎してくれるサービスなどもあり、おすすめです。

また、人がいいのも吉賀町の魅力です。4、5年前に国際交流プログラムで吉賀町にたくさんの外国人が来て、ホームステイなどの受入れをしたのですが、人の優しさをたくさん見ました。受け入れをしたのは冬でしたが、暖かい地域から来た外国人たちは薄着で…ホストファミリーをしたおばあちゃんが「寒そうだから」と夜中にマフラーを編んでプレゼントしたり、たった1日の交流でしたが帰る時にはホストファミリーも外国人の皆さんも泣いていました。本当に温かい人たちだなぁ、吉賀は良いところだなぁと再認識した出来事でした。

また私の結婚式にはアメリカからも友人を呼んだのですが、実はその友人は私が吉賀町に来たばかりの頃にも一度来たことがあり、その時には日本食も口にあわず「もう来ない」と言っていました。それが今回、都市の観光もした中で、「ケビンの住んでいるところが一番面白かった」と言ったんです。今度は子どもを連れてきたいとも…。驚きました。実はその友人が日本ではクジラを食べることを知り「食べてみたい」と言ったのですが、どこで手に入るのかもわからなかったので日本の友人に相談したところ、わざわざ探してきてくれた上に別の友人のお母さんまで呼んできて、調理して食べさせてくれたんです。アメリカの友人は、クジラの味というよりも町の人たちへの感謝の気持ちで美味しかったと言っていました。思い出に残ったのは「人」だったんです。吉賀町を訪れる人たちには、ぜひ町の人たちと話をしてみてほしいです。

クリスマス授業の前

クリスマス授業の前

SIC:ケビンさんの故郷はどんなところですか?

ケビンさん:アメリカのニューヨーク州にある、デルマーという街です。ニューヨーク市から北に3時間ぐらいのところで、山はありませんが自然が豊かです。夏は暑いのですが冬はマイナス10度ぐらいになり、雪が夏まで残るようなところです。吉賀町も雪はすごいのですが、来日前に1月の平均温度を見てデルマーよりは寒くないんだなと思っていたところ、来てびっくりしました。吉賀町は、家の外も寒いけど、中も寒かった!アメリカの家は全ての部屋が暖かいので…。2年前に町内に家を建てたのですが、断熱に力を入れました。
日本は日常生活でたくさん虫が出ますよね?私は虫がとても苦手で…虫の入らない家を建てました。奥さんも同じ考えだったので、本当に良かった。(笑)職場でも色んな虫が出るのですが、最近大きなクモが出て、私が手で取って捨てたら同僚に「ケビン、変わったね…」と言われました。学校にも虫が出るので子どもたちも嫌がるのですが、以前柿木小学校のクリスマスイベントでポイント制度を作り、挨拶したら○ポイント、虫を捕まえたら○ポイント…というようにしたところ、子どもたちが競って虫を捕まえました。捕った虫は瓶に入れて机の上に置くことになっていたのですが、ものすごい数の虫を捕まえた生徒の机の上は…(怯えた顔)。おかげで学校の虫はかなり減りました。(笑)

運動会の綱引きに参加!

運動会の綱引きに参加!

SIC:日本でこれからやってみたいことなどありますか?

ケビンさん:2つあります。1つは仕事ですが、小学校で英語が正式な教科になったこともあり、子どもたちが楽しくしっかりと学べるようにしたいと思っています。きっと先生たちの中には不安に思っている人もいると思うので、ALTがしっかりサポートして誰でもスムーズにいい授業ができるようにお手伝いしたいですし、不安な気持ちを取ってあげたいです。コロナで今まで集まりにくい状況があったのですが、今後は教育委員会の力も借りて、町内で研修や教材作りなどもできたらいいなと思っています。教員も含めとてもいいメンバーなので、意見交換しながらうまく繋いでいきたいですね。

2つ目は、吉賀町にこれからもずっと住み続けたいです。私は吉賀町の大ファンで、外国人の中では一番「吉賀愛」がすごいと思います!アメリカの家族はいつか私がアメリカに戻るだろうと思っていたようですが、以前こちらに来た時に「吉賀町はとてもいいところで人も優しいし、食べ物もおいしい。こんないいところだから、ケビンは帰ってこないんだな。」と感じたそうです。「とても安全だし、こんな素敵なところに住めるならいいんじゃない?」と言ってくれました。これからも吉賀町でできることがあればどんどんやってみたいし、地域の方と頑張って吉賀を盛り上げていきたいです。

音楽祭りのボランティアをした時

音楽祭りのボランティアをした時

■最後に
ケビンさんに吉賀町の良いところを尋ねると、次から次へと言葉があふれ出してきました。誰とでも挨拶し、知らない人とでも会話をする地方特有の文化にも慣れ、「久しぶりにアメリカに帰ったらつい誰にでも挨拶をしたくなるのですが、我慢しています。奥さんは話しかけちゃうんですけどね。(笑)」と笑うケビンさん。吉賀愛にあふれるケビンさんを通して、吉賀町や島根の魅力にも改めて気付かされたインタビューでした。これからも吉賀愛を深めながら、地域を盛り上げていってくださいね!

(公財)しまね国際センターは~外国につながる人たち~を応援しています