近年、浜田市でもベトナムからの技能実習生が増えていますが、そんな実習生の皆さんから「お姉ちゃん」と慕われている佐々木ビッホンさんにお話を伺いました。19年前に日本人のご主人との結婚を機に来県し、長く浜田に暮らしていらっしゃるそうですが、最近まで周りにベトナム語を話す人はほとんどいなかったとのこと。島根での暮らしや地域の方との繋がりなどについてお聞きしてきました。


SIC:国際結婚をして来日されたそうですが、ご主人との出会いは?

ビッホンさん:私はベトナムのホーチミンのお土産屋で働いていたのですが、そこに旅行で来たのが夫です。偶然キャンセルした友人の代理で旅行に来ていたそうなのですが、その時にたくさん買い物をしてくれて、そして数か月後にまた来てくれて…3回目に来た時にはお店のみんなと彼と一緒に食事に行きました。その後手紙のやり取りが始まり、店長が「彼は真面目な人だね」と応援してくれて、結局その2年後、7回目の訪問時に結婚しました。夫は今でも当時のラブレターを大切に取ってくれています。今読み返すと恥ずかしいですが(笑)。

ご主人の誕生日会

ご主人の誕生日会

SIC:まるでドラマのようですね!来日してからの生活はいかがでしたか?

ビッホンさん:こちらに来てすぐ妊娠し、つわりがひどかったので日本語も学べず、家で勉強をしていました。子どもが生まれて日本語ができないことに不安があり、少し大きくなってからは市内の日本語教室2つに通いました。子どもを連れて大きな荷物を持って毎回バスに乗って通っていましたが、やっぱり車がないことが不便で…日本語教室の先生に「免許を取りたい」と相談したところ、私の日本語のレベルではまだ早いと言われたのですが、皆さんとても親切で親身になって助けてくださり、私も毎日夜中まで勉強しました。自動車学校に通っていたのですが、ある時体調不良になり倒れて救急車で運ばれたりもして…なんと二人目を授かっていたことが判明したんです。学科試験に何度も落ちて、10回目でやっと合格しました!その時は先生方も大喜び、私も夫も大泣きしましたね。

ベトナムの民族衣装、アオザイを着ました

ベトナムの民族衣装、アオザイを着ました

SIC:知らない土地で日本語も十分でない中、子育てをするのは大変だったのでは?

ビッホンさん:私は日本語の勉強をするのは好きだったので、夜中まで勉強するのもそんなに苦ではなかったのですが、日本語ができないストレスは大きかったです。園からのお便りなどは夫に読んでもらったりしましたが、子どもが小さいときは誰か言葉が分かる人に近くにいて欲しかったですね。夫とも話が通じないときがあり、精神的につらかった。ベトナムでは親せきはみんな仲が良いのですが、日本ではみんな忙しくて関わりが少ない気がします。私はすごく寂しかったしイライラすることも多かったのですが、夫はとても優しくて、時々ベトナムに子どもを連れて帰ったりしていました。

1つ伝えたいことがあるのですが、私は先生や友達など周りの方にとても恵まれていて、それは日本人も外国人も含めてですが、皆さんに優しく温かい心で支えていただき、とても幸せだと感じています。私の家庭のこと(夫が仕事で数日不在にすることなど)もよく分かっていて、ママ友が「子どもを預かるから休みんさい」と言ってくれたり、みんな本当に優しくて…現在子どもは高校生と中学生になり、私も日本語はまだ勉強中ですが、可能な範囲でボランティアなど何かできることをお手伝いしたいと思っています。

ベトナムに帰った時。

ベトナムに帰った時。

実家はホーチミン市にあります。

実家はホーチミン市にあります。

 

 

 

 

 

 

 

SIC:ビッホンさんは、地域に住むベトナム人の技能実習生の皆さんとも繋がりがあるようですね。

ビッホンさん:当時浜田ではベトナム人と日本人の国際結婚なんて珍しく、技能実習生は一人いたのですが、一緒に遊んだりできる環境ではありませんでした。それが2、3年前からベトナム人の技能実習生をたくさん見かけるようになり、今は特に日本語教室で会った実習生ととても親しくしています。よく家に遊びに来てくれるので娘もお姉ちゃんのように慕っていて、部活の大会前など「髪結んで~!」とお願いすることもあります(笑)。
少し前に、ベトナムの旧正月を祝うイベントを公民館で開催したのですが、予想以上にたくさんのベトナム人が集まってびっくりしました。「またやって欲しい」と言う人もいます。ベトナムの子たちは地域の方との繋がりがあまりなく、昨年は江津で開催された「ベトナム☆フェスタ@ごうつ2019」に一緒に参加したのですが、浜田でも何か地域でイベントができるといいなあと思っています。江津のようにいきなり大規模なものはできませんが、小規模なものから、何かやってみたいですね。

ベトナム☆フェスタ@ごうつ2019にて。(当日はバインセオを作られたそうです!)


■最後に
このインタビューをした数日後、周りの友人にも後押しを受け、ビッホンさんは町内の役員さんのところを訪ねて地域の外国人住民と日本人住民との交流について相談をされました。早速クリスマス会を兼ねた交流会の開催も決まり、将来的には「お寺でベトナムカフェ」など色々と楽しそうなアイディアも浮かんでいるようです。子どもの手が離れてきた今だから、とアクションを起こされたビッホンさん。SICも応援しています!


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