新型コロナウイルスの感染拡大防止対策がとられ、とても静かなキャンパスの一室で、留学生の陳其柔(チンキジュウ)さんにお話を伺いました。SICのアンテナサロンなど、留学生と子どもたちとの交流事業等にもよく参加してくれる陳さんは、島根県立大学浜田キャンパスの大学院で学ぶ中国寧夏回族自治区からの留学生です。


SIC:まず、島根に留学されたのはどうしてですか?

陳さん:小さな頃は日本のアニメに憧れていたのですが、高校生になると川端康成や村上春樹などの小説にはまって日本人特有の繊細さや考え方に興味を持ち、「雪国」のような伝統的な生活を体験してみたい、日本に行ってみたいと思うようになりました。実は島根県のことは知りませんでしたが、島根と寧夏は友好提携を結んでいたため特別なプログラムがあり、島根への留学を決めました。

石見海浜公園に行きました。山の上から見渡す景色がとてもきれいです!

石見海浜公園に行きました。山の上から見渡す景色がとてもきれいです!

SIC:島根にはじめて来られた時の印象はどうでしたか?

陳さん:初日にゆめタウンに行ったのですが、なんだか懐かしい感じがしました。またバスの時刻表を見たとき、バスの到着時刻が「○○時32分」のように中途半端な時間に設定されていたので驚きました。
島根のバスは、人を待ちますよね?他の留学生と一緒にバスに乗ろうと思ったら、すでにバス停にバスが来ていたため慌てて走って行って乗りましたが、日本の学生は全く焦ることもなくバスまで歩き、乗り込みました。中国だったら時間になれば待たずに出発しますから、驚きました。私たち留学生は席に座ってもしばらく息が上がっていたのに、日本の学生は落ち着いていましたね(笑)

2019年の浜っ子祭りで武者行列に参加しました。普段着ることのできない着物を着させてもらって、とてもよい体験になりました!

2019年の浜っ子祭りで武者行列に参加しました。普段着ることのできない着物を着させてもらって、とてもよい体験になりました!

SIC:新型コロナウイルスの影響で大学もオンライン授業が続き、静かですね。陳さんの生活にも影響はありましたか?

陳さん:そうですね、キャンパス内は静かで、学生はどこにもいなくて、まるで休みのようです。ただ、大学院では普段から寮と研究室を往復するぐらいなので、実はそれほど変わりません。旅行に行けないぐらいでしょうか。学部生の時には友達と飲みに行ったり、カフェに行ったり部活をしたりと楽しく過ごしていましたが、院に上がってからは環境が変わりました。

SIC:中国のご家族はどうされていましたか。

陳さん:両親がクリニックを持っていますが、2カ月間休業させられて大変でした。生活も不便で、1日に1家族1人しか外出できず、それもサインや検温が必要でした。当時家族とはWeChatというアプリを使って毎日連絡をとっていましたが、日本は中国ほど規制が強くなかったため、家族はむしろ日本にいる私のことを心配していました。

すき家の牛丼が大好きです!安くて美味しいですね!

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SIC:普段、空いた時間などはどのように過ごしていますか。

陳さん:うーん…家でスマホを見ています(笑)。勉強していない時はスマホを触ったり、買い出しに行ったりするぐらいです。
中国にいた時は趣味でアイススケートをしていて、日本でもスケートがしたくてスケート靴を持ってきたのですが、浜田のスケート場に行くためには靴を背負って山道を登らなくてはいけないので…最近は行かなくなりました。出雲の湖遊館にも行ったことがありますが、ここからは少し遠いですね。学部生だったときには、大学の弓道部に入っていました。弓道は面白かったのですが、日本人のように先輩の動きをみて、空気をよんで動くということが私にはとても難しかったです。同じ時期に入部していてもみんなは見ているだけで次に何をするのかが分かっていましたが、私には分かりませんでした。中国の部活とは全然違いましたね。

島根県立大学のこの辺りの景色が一番好きです。一年中緑が消えず、いつも生き生きしています!

島根県立大学のこの辺りの景色が一番好きです。一年中緑が消えず、いつも生き生きしています!

SIC:陳さんは、SICが開催する交流イベントにもよく参加したり、協力してくれたりしますね。多文化共生に関心を持ち、研究テーマにも選んでおられましたが、何か今後やってみたいことなどありますか。

陳:そうですね…研究のために色々な調査をしたのですが、留学生はとても恵まれていると感じました。寮もあって、奨学金もあって…同じ中国人でも、技能実習生や日本人の配偶者として日本で暮らす人がいることなど知らない留学生も多いと思います。ここで生活している外国人の中には日本語が全く分からない方もいて、子どもの教育でも困ることがありますね。ボランティアの支援も必要です。だから留学生がそこに入って、子どもに教えてあげられたらいいのになぁと思います。松江に住む留学生にもインタビューしたことがあるのですが、松江に住む中国人と繋がりたいという声もありました。困っている人はきっと多いと思うので、留学生が手助けできればいいですね。


■最後に
SICのイベントにもよく参加してくださる陳さんにその理由を尋ねると、「こういう活動に参加しないと日本人に接する機会がないので…」という答えが返ってきました。コロナ禍ではありますが、地域に暮らす外国人住民の支援にも関心のある陳さんと、何か一緒にできることを少しずつでも探してみたいと思います。


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