ここ数年、島根県にも外国にルーツを持つ子どもたちが増えていますが、今回はブラジルにルーツをもち、小学生の頃から島根で暮らすマソーラさんにお話を伺ってきました。ご両親はブラジル出身で、マソーラさんが来日したのは1歳のとき。家庭内ではポルトガル語を使っているそうです。和食も大好きで、納豆やサバの味噌煮が大好物とのこと!今年の春に高校を卒業し、市内の児童クラブでお仕事を始められたマソーラさんに島根での暮らしなどについてお聞きしてきました。

マソーラさん

マソーラさん

SIC: 来日された経緯など聞かせてください。

マソーラさん: 母は日系ブラジル人の2世なのですが、治安や安全、また教育のことを考えて私が1歳の時に一緒に日本に来ました。しばらくは親せきのいる長野県に住んでいましたが、小学校に入る時に出雲の工場で働くため、島根に移り住みました。

父はイタリア人とブラジル人のミックスですが、日本の文化が大好きで、よく神社やお寺を回っています。私も出雲が大好きで、旅行に行って帰ってきた時に「出雲市」の看板を見ると「やったー!帰ってきたー!」と安心するし、すごく嬉しくなります(笑)。将来もし市外に出ることがあっても、また帰ってきたいです。

お父さん。この帽子が大好きで、出かける時にはいつも愛用しています!

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SIC:4月からは児童クラブで働いているそうですね。

マソーラさん: はい。今年の春に高校を卒業して、出雲の「わくわく児童クラブ」で働き始めました。ここは外国にルーツのある子どもたちの支援を行うために新しくできた児童クラブで、17人中5人がブラジル人です。小学生も、中学生も参加できます。ここで一緒に遊んだり、日本語を教えてもらったり、元小中学校の先生がいるので学校の勉強も教えてもらえるし、ポルトガル語の通訳もいますよ。
私自身はじめての就職で、子どもと接するのも初めてだったので戸惑いもありましたが、今はとても楽しいです。人と関わるのが好きで、通訳にも興味があります。普段は日本語で話していますが、子どもが困っているときはポルトガル語で話したりしています。

仕事中の私と小学1年生のブラジル人の女の子

仕事中の私と小学1年生のブラジル人の女の子

SIC: 子どもの頃から自然な形で多文化に触れる機会があるのは、とても理想的ですね!

マソーラさん: そうですね。子どもたちはずっと日本人同士で、または外国人同士で暮らしていくわけではないので、他の国の人と交流することは大切だと思います。児童クラブでは保護者向けのおたよりを日本語とポルトガル語で準備していますが、分けるのではなく、1枚に2つの言語を入れるようにしています。そうすることで、日本の保護者にもブラジルの子どもや保護者がいることを意識してもらえるし、実際に喜んでもらっています。

SIC:また、外国にルーツを持つ若者を支援するボランティアグループでも活動しておられるそうですね。

マソーラさん:はい!出雲にMANABIYA(まなびや)という団体があって、私も小学2年生の頃からお世話になっていたのですが、今年からは支援する側として参加しています。MANABIYAでは勉強を教えてもらうだけでなく進路や悩みを相談したりもできるし、課外活動などもあります。10人来る日もあれば1人だけの日もありますが、自分自身勉強が苦手だったこともあって、そんな気持ちもよく分かります。高校生の時に先生にたくさん助けてもらって嬉しかったことをよく憶えていて、みんなと接する時には相手のことを思いやって、寄り添いながら、自分がされて良かったことを次の人にしていこうと思っています。

外国にルーツをもつ高校生の交流会

外国にルーツをもつ高校生の交流会

SIC:マソーラさんは1歳で来日されて、日本語も本当に流暢に話されていますが、学校の授業など日本語で苦労されたことはありますか?

マソーラさん:はい、小学3年生から中学1年生までは通っていた小学校で日本語の指導を受けていました。他の生徒が授業を受けている間、日本語の先生と1対1または2対1で、簡単な日本語の文章の作り方や基礎的なことをゆっくりとわかりやすく教えてもらっていました。
4年生ぐらいになってから、段々と日本語でコミュニケーションが取れるようになっていきました。やっぱりブラジル人の友達だけではなく日本人の友達とお喋りしたり、日本人の先生達とも話したりしていたので、そこで日本語のコミュニケーション能力がかなりついたと自分では思います。クラスにいてもよかったけど、どうしても授業が進むのが早くて、追いつけていなかったです。中学生以降は、授業で「日本語が分からない」という理由ではあまり困らなかったです。

今は自分が支援をする側にいますが、子どもたちには高校に進んでもらいたいという気持ちがあります。自分の体験もあって、それは伝えています。長く日本に住むなら、日本のルールや文化も理解してほしいし、それは大人でも同じです。日本語を学ぶことで能力も高まるし、日本人の友達を作ったり、他の国の人と関わったりすることで学びがあるはずだと思っています。

小さい頃の私とお母さん!

小さい頃の私とお母さん!

SIC:ブラジルにはご家族がいらっしゃいますか?

マソーラさん:はい、サンパウロにおばあちゃんがいます。ブラジルには幼い頃と高校2年生の時、あわせて2回ほど帰りました。
ブラジルのスーパーで、お客さんが商品のお金を払う前に袋を開けて食べているのを見た時はびっくりしたというか、ショックでした(笑)。ブラジルでは後で支払えば問題ないです。また、おばあちゃんの家で掃除の仕方があまりにも違っていてびっくりしたのですが、ブラジルではバケツの水をかけて壁ごと洗い、モップで流して掃除をします。とてもいい匂いでした!また、卵を買ったら傷んでいないか確認してから使うことや、水道の蛇口から水を飲まないことなど…驚いたことがたくさんあります。
私は和食も好きですが、母が作るブラジルの料理も大好きで、コシンニャ、チキンストロガノフなどが大好物です。

ポモとハク!

ポモとハク!

SIC:今後について、考えていることなどありますか?

マソーラさん:そうですね…子どもに関わることの他に、介護にも興味があります。またボランティアや、地域活動を続けていきたいと思っています。ゴミ拾いとか海岸清掃、特養訪問などありますが、人のために何かすることが好きで、自分にもプラスになります。島根、出雲に一緒に住んでいる人と何かできることはとても楽しいし、嬉しいです。色々な世代の人と話すと、色々な方と知り合えて発見がたくさんあります。人とつながれるのが嬉しいです。

■最後に
ブラジルにルーツを持ち、多くの時間を島根で過ごしてきたマソーラさん。お話を伺っていて、とても大切な時期に周囲の方から温かく見守られ、寄り添った支援を受けてこられたのではと感じました。今度は自分の番、と支援する側に回り活躍しておられるマソーラさんの姿はとても頼もしかったです!外国にルーツをもつ子どもたちが増えてきていますが、これから島根と世界とをつなぎ、島根をもっと豊かにしていってくれる人たちが増えることを、とても嬉しく思いました。今後のご活躍を期待しています!

(公財)しまね国際センターは~外国につながる人たち~を応援しています