韓国蔚山(ウルサン)広域市からの留学生、李夏埈(イ・ハジュン)さんは漢字が得意です。小さい頃、お祖父さまに「新聞くらいは読める男になれ。」と漢字の勉強を勧められ、こつこつ漢字の勉強を続けたことが日本への留学と繋がっています。


SIC:韓国ではどんな時に漢字を使うのでしょうか?

イ・ハジュンさん:基本的にはハングル文字を使っていますが、人の名前や、政治的な内容、例えば政党の名称などに漢字を使っています。漢字を使うことによって、目立たせるような、アピールを与えるような効果があります。実際には、私の年代を含めて、最近の子どもは漢字を知りません。基本的な、簡単な漢字しか読めません。なので、自分の子どもに名前を付ける時に、漢字がわからないから、本で調べたり、名前をつけるのを専門とする人に相談したりする人たちもいるようです。私はお祖父さんの勧めで漢字を勉強していたので、高校に入った時には漢字検定の1級を持っていました。でも、一級はとったけれど、新聞を読む以外に使うところが全くなくて、高校2年生の時に、第二言語で日本語の勉強を始めました。その頃にジブリの「千と千尋の神隠し」を初めて見て、その絵の綺麗さに、「字幕なしで見たい!」と思い、本格的に日本語を勉強するようになりました。

韓国の仏国寺(ぶっこくじ)にて。ここはおススメとのこと。

SIC:日本に来たのは浜田が初めてですか?

イ・ハジュンさん:留学は初めてですが、日本には7、8回来たことがあります。大阪とか都会にも行きましたが、看板が日本語なだけで、その他は何も変わらないという印象です。留学先候補は5校ぐらいありましたが、東京などの都会は最初から見ずに、島根と宮崎で迷いました。ちょうど日程が合ったのが島根県立大学だったので、ここに決めました。それと、5年くらい前に日韓交流プログラムで山口県に行った時にお世話になった人や、その時からつきあっている日本人の親友が山口にいるのも、決め手だったかもしれません。浜田から山陰本線で山口にもよく行きます。韓国は地下鉄が走っていますが、私の故郷にはまだ地下鉄がなくバス社会なので、電車に乗ることがほとんどありません。だから山陰本線のように、海沿いを走り、電車の中から海を眺められるのはとてもいいと思います。

海沿いを走る山陰本線が好きでよく乗ります。

SIC:田舎は不便じゃないですか?

イ・ハジュンさん:不便だからこそ、あちこちに行けるチャンスがあるんだと思います。そこに行くまでに、途中でまた何かを見つけたり、誰かに知り合えて話ができたり、冒険のような毎日です。ただ、田舎の人は外国人に慣れていないので、接点を持つことが難しい。また、国際交流と言いながら、外国人を労働力としか考えていないような扱いをされることもあり、その点は残念です。外国人を使う仕事があるのはやはり都会だと思ったので、将来は東京か福岡で仕事を探すつもりです。

島根の好きなところをあげるなら、間違いなく松江城!

SIC:日本での生活が長くなりそうですね。ご家族と離れて寂しくないですか?

イ・ハジュンさん:うちの親は放任主義というか、もうちょっとサポートしてくれてもいいんじゃないかと思うくらい私をほったらかしです。留学したいと話した時も、「自分で全部やるならいいよ。」とだけで、渡航費も、学費も、生活費もすべて私が自分でやりくりしています。私の留学の目的は、「自分は家を離れて無事に過ごせるか。」ということでした。問題なく無事生活ができているので、安心しています。これなら、日本で就職しても大丈夫だという自信が持てました。


■最後に

約束の時間の5分前には事務所に訪れたイ・ハジュンさん。「韓国の方はみんな時間に厳しいんですか?」との愚問に、少し考えながら「どこの国にもいろんな人がいますから、国柄ではないでしょう。日本人だってルーズな人はルーズだし。」と諭され、はっと気づかされました。どこの国かではなく、どんな人かが大切であることを。静かに言葉を選びながら、丁寧に話すイ・ハジュンさんですが、その内に何か力強いものが見えた気がします。日本での就職、応援しています!


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